遥かに仰ぎ、麗しの(PULLTOP) 87点
発売:2006/11/24 プレイ:2006/11/25,26,12/2,3 レビュー:2006/12/10他
| 項目 | 評価 | コメント |
| 引き込み | 8.0 | コメディとシリアスのバランスが良く、長い話でも飽きることが少なかった。 |
| 感動 | 7.5 | 強く感動する場面はあまりないが、各ルートにおいて、小さな山でそこそこなものが多い。 |
| エンド | 7.5 | 未解決なことがあったり、急な解決があったりするものもあるが、全体的に暖かくて幸せな感じが残る。 |
| 雰囲気 | 8.5 | ぬるくて甘くて暖かい、だけどそれがいいという感じの展開。盛り上げ役も活躍していて楽しめる時間が長い。 |
| キャラ | 8.0 | みやびをはじめとして、変化と内面の描写で惹きつけるキャラが多い。リーダ他の非攻略キャラがとても充実。 |
| 音楽 | 8.0 | 「星空と喧騒と」「ともしびのうた」「夜明けを運ぶ風」がお気に入り。 |
| 画像 | 9.0 | 物語の分量を考えると、もっと枚数がほしいところ。(原画家が好みなので高い点になるが) |
| Hシーン | 8.0 | ルートごとの回数のアンバランス、絵の使いまわし(不足)が惜しい。 |
| システム | 8.0 | 特に問題なし。(セーブ数100でもぎりぎりだったが) |
| 主人公 | 7.5 | 本来、庶民が活躍できる舞台ではない中で、できることを頑張った好人物(特に本校編) |
| コンセプト | 8.0 | 本校編と分校編。「いろいろと異なるからこそ、それぞれが光る」と映れば成功か。 |
| 雰囲気が良く、暖かい作品─とまとまるかな、と思っていましたが、それ以上に「フォローの上手い作品」という印象です。私は、一度気になると、作品の印象が大幅に悪くなることが結構あるのですが、今作では、途中で不満・違和感を感じていた点のほとんどがその後の展開によって解消されて(「気にならなくなる」というのも含みます)、好印象ばかりが残ることになりました。そういえば、リーダがみやびをたしなめるところから、「良いフォロー」は始まっていたのかもしれません。 また、主人公もなかなかの好人物です。みやび等への対応に見られるコミュニケーション能力、人を見捨てない優しさや行動力を持った人物として描かれています。むしろ、登場人物達が彼を人間的に高評価することにとって、そう思える流れになっているといえるのかもしれません。 そして、長所として挙げられるのは「雰囲気の良さ」だと思います。これは、はっきりいって相性の問題なのですが、この物語の展開は、ぬるくて甘くて暖かい、だけどそれがいいということです。ネタが適度に読めていたり、深刻そうでも早期に前向きな決着がなされたりするので、不安や不愉快になることがなく、思わずニヤニヤしながら楽しめましたし、だからといって、ノリがいいので退屈することもなかったです。 また、いくつかの場面では「ミエミエのシーンが来る」と見せておいて、少し違う展開を見せてくれるところもありました。 (学院や学院生の真相については、体験版からでもある程度予想できますし、箱にも一部書いてありますし…) 減点要因が(結果的に)あまりなくなったことで高得点(今年発売作品中 2位/16作品)となりました。 お気に入りはシナリオ・ヒロインともに、1番がみやびで、2番が殿子です。 |
(ネタバレ注意)
以下、クリア順ルート別感想(順番は学院生紹介そのままです。)
プレイ時間は6周合計で35時間。各個別がどれも4〜5時間以上と大ボリューム。
|
<風祭 みやびルート(1周目)> <鷹月 殿子ルート(2周目)> <八乙女 梓乃ルート(3周目)> <仁礼 栖香ルート(4周目)> 不満・違和感が残ったルートで、90点に届かなかった要因の1つ。 プレイ前の期待が高すぎたことと、他の分校ルートのワリを食っていることによるものなのはわかっているのですが。 前半の栖香は体験版で期待した通りの魅力的なキャラでした。追い込まれたり慌てたりしたときには、早口になったり頬を染めた様子がかわいかったですし、遊園地等での意地っ張りでどこか抜けているところもよかったです。ソフトボールで見せる弱いところ、他人の助けをかりることができるようになるところもキャラに合った展開に見えました。 ただ、後半の展開については、損な役回りをしていると思います。 まず、栖香が抱えている問題が、結局は「誤解」の一言に尽き、空回りしている場面の面白さや、解決する際の感動があまりなかったということ。もちろん、「誤解」や「すれ違い」というのは多用されるネタでもあり、それ自体に不満があるわけではないのですが、解決したときに、感動よりも「今までのはなんだったんだ」という思いの方が強いと後味が悪いです。そして、追い討ちをかけるように、美綺ルートでは、この問題が1話で解決し、栖香ルートで「仁礼家から全てを奪う存在」であった相沢についても、桜屋敷を欲しがっていた憎めない理由が開かされたり、「成り上がり」という栖香を美綺がたしなめたりとなるわけで、このルートでの栖香(と主人公)の行動はマイナス面ばかりが印象に残ることになります。 また、栖香が「主人公なしでは生きていけない」状態になるきっかけが、「親との関係・桜屋敷問題等でピンチになったこと」というのも、堅物の栖香がかわいらしく変化して少し成長したのを見て「萌え」を楽しんでいた私にとっては、あまり面白くない展開です。ピンチになって、愚痴をこぼせる相手、打ち明け話をできる相手が主人公しかいない状況まで追い込まれたから、主人公へなびいたような感じがするからです。 (その後の調教風味のシチュエーションが好みかどうかにもよるでしょうが) そして、やや粗探しのしすぎになりますが、このルートは本校編の「愛されるのが怖い」、美綺ルートの「「好き」と言えない」といった、主人公の過去の傷を解消するイベントがありません(トラウマの存在はほのめかされているのに)。これをやるには、主人公がためらい、ヒロイン側が押す場面を要するわけで、この展開では入れようがないのでしょうけど。 余談:「技術的にはよくても面白くない」という絵の話(7話)は何の話につなげるつもりだったのでしょう。 暁にそう言われて気分を悪くなることで、主人公が栖香に好印象をもっていることを出すためでしょうか。単なる双子の話のためかな。 <相沢 美綺ルート(5周目)> 主人公曰く「ショートで活発で利発で大胆不敵で繊細でいい加減で我慢強い」女の子である美綺に萌えるシナリオ─ だけではないプラスの部分もあったのですが、なぜか、あまり高評価にはならなかったルート。 明るくて常に他人を気にかけることができ、よく気がつく、機転のきく女の子である美綺は、他のルートでも良い雰囲気を作り上げていたのですが、このルートでは、主人公と「親友で相棒で恋人」という関係を作り上げていくなかで、さらに魅力を発揮していきます。 その魅力は、気の合う相棒として接するとき、主人公を異性として意識したのに女の子としてみてもらえないとき、エロエロに迫ってくるときの「萌え」の部分だけではなく、主人公の抱える傷に気づきながらも、許されるまで深いところには決して踏み込もうとせず、最後には「悲しい時には泣いていい」と救う優しさにあると思います。 そして、それに「好きだよ」の一言で応えるという、この「互いを理解し合うこと」「自分と相手、両方の幸せを望むこと」までの流れの描写については、6ルート中、みやびルートと1,2を争う良さだと思います。 また、後半の分校と本校の生徒が一つになって調査をするところは、大勢のキャラの登場と掛け合いもあって楽しかったです。ただ、七不思議にもつながっているとはいえ、オチがどうにもできないところがシナリオとしては厳しいところだと思います。 「みんな、さいっこうの思い出をありがとうっ」 と美綺が言うように、みんなの、そして2人の思い出としては十分の展開でしょう。振り返るシーンも良かったですし。 ここは「終点」じゃない。全ての「始発駅」だ。 「本当は声をかけてはいけない」はずの出会いの場所での締めくくりも綺麗でした。 余談 この無愛想なコンクリートの壁は、アタシにとって思い出で輝いてて… という地下でのセリフを含め、ジーンとくるセリフが上手かったと思います。(CV:安玖深音さん) 余談2:このルートの坂水は、登場回数が多いのに不発もいいところ。最後には消されますし。 <榛葉 邑那ルート(6周目)> 二転三転の展開や盛り上げ方に「すごい」と思ったルート。 世界は光の当て方で見え方ががらりと変わってしまうものなのだ。 とあるように、光(視点・立場)の当て方の違いを活かした構成は面白かったです。李燕玲と鹿野上渉の描写には上手くだまされましたし、ゲストの話やチューリップの話など、「邑那が何者か」という伏線・仕掛けは良くできていたと思います。ただ、この「すごい」は「話が面白い」、「楽しい」には近いのですが、「感動した!」というのとは少し違う気がしますし、「美少女ゲームとして満足」というのからは、結構離れていると思います。 (邑那に魅力を感じ、「もっと知りたい」という主人公に感情移入できた方には、大当たりなのではないでしょうか。) というのも、「二人だけの王国」であった彼女らにとって、主人公のような存在は無力で不要に感じたからです。 恋によって、主人公と邑那の態度が徐々に変化していくさまや、その後の邑那の葛藤は描かれているのですが、主人公が終盤でも「自分がいなくても、彼女達は同じことをしていただろう」と考えるように、主人公の活躍の場はかなり限られていたと思います。 例えば、主人公の働きによって、みやびや栖香が大きく変わったソフトボール大会においても、邑那にとっては「楽しかった」という程度にしかならないのです(この感情を出すだけでも大きな変化といえばそうかもしれないが)。また、正確な予測が困難なスポーツなのだから、外れて「温室での予測が全てじゃない」という展開の方が、人間的に成長できてよかったのではないかと思います。 そんな主人公ですが、ラストで源八郎と対峙することで、源八郎だけでなく、物語を引き立てていると思います。あの場面は、 『この作品は、これまで金儲け以外に「変態ジジイ」等のネガティブ面を見せてきた源八郎さえ、「これぞ大物の魅力」というポジティブな面で塗り替えてしまうのか─』と、まさに「光の当て方で…」という感じでした。 深読みをするならば─ 光の当て方により、1人の人間には様々な面がある。 人を裁くにしろ、憎むにしろ、愛するにしろ、その人の様々な面を見るべき─ となるのかもしれませんが、この類の話は不得手もいいところなので、このあたりでやめておきます。 余談ですが、美術館(土地管理会社)を使った邑那の作戦って、源八郎が能力を認めて絶賛するほど、素晴らしいのでしょうか? 李燕玲達の陽道側が昔、対仁礼グループに仕掛けた作戦がそれなのですから、 ひっかかる陽道グループがアホなのではないかと思ってしまいました。 <最終話> 雰囲気の良さを活かした、多くを語らずとも余韻を残すことのできるエピローグ。決して悪くはないと思います。 でも…こういう場面で大きく評価が上昇しうることを某作品にて経験した私にとっては残念。 この作品が「名作」かどうかは、もちろん各プレイヤーの判断ですが、 私にとっては、「名作」になるチャンスをみすみす逃した形に見えました。 |